「病院広報アワード2024を振り返る」
他事例、交流会… ノウハウの共有に期待
【NPO法人メディカルコンソーシアムネットワークグループ理事長 山田隆司】
CBnews主催の「病院広報アワード2024」大賞が7月10日に決まりました。2回目となる今回は、「経営者部門」が新たに加わり、「広報担当部門」と2部門で大賞病院が選ばれました。一次審査、二次審査を経て選ばれた病院がオンラインによるプレゼンテーション(セミファイナル)を行い、視聴者投票で多くの得票を集めた病院がファイナルへ進み、その中から最終的に大賞が決定しました。
今年は前回よりエントリー数も増え、計252件のエントリーとなり、病院広報に対する全国的な盛り上がりを感じました。
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他院の広報活動を知る機会はそれほど多くないため、セミファイナルから視聴でき、多くの方がいろいろな病院の取り組みや成功事例、課題から、学びや気づき、刺激を受けることができたのではないかと思います。エントリーされた病院も自院の広報活動を振り返り、より効果的な活動を模索する有意義な時間となったのではないでしょうか。今後の活動のヒントを得る機会として貴重な場となったことでしょう。
特に印象に残ったのは、各病院が多様な広報手段を活用している点です。広報誌、ウェブサイト、交流サイト(SNS)、イベントといったさまざまな媒体を通じて、患者や地域住民に向けて多角的に情報を提供し、地域医療の発展に貢献する姿勢は、今後の病院広報の方向性を示すものでした。
■広報の重要性と役割の再認識
広報は単なる情報発信にとどまらず、病院の経営戦略や地域医療の発展に直結する重要な役割を担っています。ステークホルダーとの双方向コミュニケーションを促進し、地域との絆を強めることで、より良い医療サービスの提供基盤が築かれ、病院全体の信頼性とブランド価値の向上につながることが期待されます。
「経営戦略」「地域とのつながり」「双方向コミュニケーション」といったキーワードは病院広報において欠かせません。SNSや動画など、時代によって新たなツールが出現し、各病院で創意工夫が見られますが、そのベースにはこれらキーワードがしっかりある。そんな広報活動が当アワードでも高く評価されるのだろうと思います。
■技術の活用と広報スキルの向上
病院も病院広報も、デジタル技術の活用は不可欠な要素としてますます重要性を増しています。SNSやウェブサイトを通じた迅速かつ的確な情報発信は、コミュニケーションを深める上で欠かせません。特に、緊急時の情報提供において、その力を発揮します。
今後も患者との円滑なコミュニケーションを図るためのチャットボットの導入や、医療情報を視覚的に分かりやすく伝える動画コンテンツの作成など、次々と新しい手法が取り入れられると思います。これらの技術革新は、広報活動をより効果的かつ効率的に進める手段として、ますます重要性を増していくことでしょう。
また、広報スキルの向上やノウハウの共有を目的とした研修や交流会は、病院広報パーソンの能力向上に大いに役立つ場であり、他の医療機関との連携や協力体制を構築するうえでも重要な機会となります。アワードで紹介された成功事例から学び、他院の取り組みを積極的に参考にすることで、広報活動の質がさらに向上し、自院の広報力が一層強化されることが期待されます。
■今後の広報活動の方向性
デジタル技術の急速な進化に伴い、広報パーソンの皆さんはそのトレンドをキャッチし、うまく取り入れて情報発信されています。
一方で、DX化が進めば進むほど、ますます必要となるのは病院スタッフと患者や地域住民との心の通ったリアルなふれ合い、交流だという気がしています。広報パーソンは病院と地域をつなぐ人として、地域社会との連携をさらに強化させ、地域のニーズを敏感に感じ、それに応える行動が求められる時代ではないでしょうか。
病院広報アワード2024は、病院広報の未来を見据えた重要なイベントでした。広報活動の質を向上させるための示唆を提供し、広報活動が病院の経営戦略や地域医療の発展に寄与することの重要性を示しました。病院と地域社会を結ぶかけはしとして、病院広報が確立されることを大いに期待しています。
今後も皆さんのますますのご活躍を祈念して終わります。
山田隆司(やまだ・たかし)
東京医学専門学校臨床検査科卒業。国家公務員共済組合連合会虎の門病院臨床検査部、診断薬会社、実験動物研究所センターを経て、1990年より医療法人鉄蕉会亀田総合病院入職。幕張新都心に新設した亀田総合病院附属幕張クリニック準備室室長・事務長・千葉事業部管理部長を務める。2006年より医療法人敬和会大分岡病院(現在・社会医療法人)広報マーケティング部部長、11年より同部顧問。13年より多摩大学医療・介護ソリューション研究所副所長を務める。現在、NPO法人メディカルコンソーシアムネットワークグループ理事長、全国病院広報実務者会議代表、病院広報誌編集会議代表、多摩大学医療・介護ソリューション研究所フェロー、DPCマネジメント研究会理事、日本医療実践協会東海支部参与、医療法人広報顧問などを務める。
医療介護経営CBnewsマネジメント
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